2013年05月14日
ネパールへの旅 vol.20 ポカラの休日②
3月12日(火)
ゆったりとしたポカラの街で今日一日くつろいで、
明日はまた、カトマンズまでオンボロバスでガタガタ道の移動日の予定だ。
そして明日になると、私はまたひとつ歳を取り43歳になる。なってしまう。
まぁ42も43も何て変わることのない数字なのだが。旅の途中で誕生日を
迎えるのはちょっとロマンチックで嬉しい。
お気に入りの湖畔沿いの道を走る、とおくにポカラの観光街が見えている。
18才の息子に対して、また逆上してキレてしまった事を情けなく恥じながら、
42のオヤジは、人気のない静かな場所を求めて自転車を漕ぐ。
「なぜそれが良くない事なのか」を頭で考え、整理して理屈として伝えようとしても、
本人を目の前にすると感情的になってしまい、いつも筋道を立てて諭すことができない。
私にとって息子と真剣に対峙するのは、結構しんどい事なのだ。
自分が己というものをいかに持っていないのかを、日頃いかに物を考えていないかを
見せつけられる事になってしまうのがツラかったりする。
この歳になっても、いまだに心が不安定で、確固たる思想も座右の銘もなにもないのだ。
偉人の自伝を読んでは興奮し、感動のドキュメンタリーを観てはすぐに感化されてしまう。
草のうえに座り、またリピートして「積荷のない船」を聞く。風がほどよく吹き、日差しはやわらかい。
昔からいつも私は、他人にはっきりとした進言や意見を言えない。
義務や責任からなるべく逃げて、ふらふらとだらしなく生きている私には、
誰かに語ったり教えたりする資格はまったくあるとは思えないのだ。
学校の先生や医療関係の人たちや現場で汗して働く人たち、
世の中には立派に生きている人達が結構いて、息子には、そんな人達と出会い
影響を受けてほしいと願う。
湖で漁をする女子、日本ではまず見られない渋い光景である。
正直、私より子供たちの方がはるかに人間としての品格を感じる。
素晴らしい母親の愛情を受けた三人は、嘘やズルさがなさすぎて心配になるほどで、
特に、まじめでストイックな二人の娘たちへは尊敬の念があり、日頃も頭があがらない。
そんな私が、息子の目を見て堂々と語れないのも無理はないのだ。開き直ってやる(笑)
つくづく自分は父親向きじゃないなぁとあらためて思わされる旅である。
遊び好きで、美味しい酒や飯、女子への関心が脳みその大半を占める事を
ばれないように隠して棚に上げながら、しらじらしく父親づらしても、
もしかして子供は本能的にうっすらと見抜いているのかもしれない。
まぁ気が楽だから、それでも別にいいんだけど。
これ以上行けないところまで自転車で進んだ。マウンテンバイクはけっこう楽しいもんだ。
カフェにてまたビールと持参のスコッチを飲み、買い物めぐりをしているであろう息子と偶然あえれ
ばとメイン通りを眺める。いい店だったのでまた晩飯のあと一緒に来ようと計画する。
ほろ酔いでごきげんになり街を闊歩しながら、宿に戻り鳥の声を聞きながら昼寝をした。
五時に宿に帰ってきた息子に、朝の事を謝り、また桃太郎へ向かう。
互いに無口なまま、カウンターから通りで遊ぶ子供たちを見ながらビールを飲む。
すっかり日本食なわたしたち。
もくもくと食事する私達の目の前で、少し恥ずかしそうにしながら無邪気に踊る女の子。
ふと息子に聞きたくなって、話しかけてみる。
「なぁ詩、小さい頃のいちばん古い俺との記憶ってなんだ?」
「わからん」
「・・・じゃあ、オカンとのいちばん古い記憶は?」
「・・・・・」
「ないのか?」
「ない」
「食ってしもたから、もう買い物に行ってきていい?」
「・・・じゃあ九時までに宿に戻れよ」
なんだかうまくいかないもんだな。(-_-;)
小さかった頃の息子に雰囲気の似た男の子を見ながら、残りの飯を食った。
昼間と同じ席に座り、暗くなる通りを眺めながら、同じくビールとスコッチを飲む。
前の席のヒッピー風の白人が、しきりにウロウロして怪しい。ウエイターも迷惑そうにしている。
どうやら立て続けに吸っている紙巻はタバコじゃなさそうだ。
突然、振り向いて私の顔を見つめて、「日本の地震はとても悲しいことだ」と言ってきた。
目に涙をためて悲しそうな顔をしている孤独そうなヒッピー。たぶんいいヤツなんだろうな。
「トウホクはもう大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、少しづつ復興しているよ」と手のひらを右肩あがりに動かして日本語で言った。
宿に戻り、早い目に布団にはいるが昼寝のせいか全く寝られない。
食堂からは、クリシュナさんと息子の話し声が聞こえている。
もう何時間も楽しそうに話している、いろんな話しを聞かせてもらっているのだろう。
旅で出会う人たちと積極的に触れ合おうとする息子が頼もしくて嬉しい。
明日からは、もう少し息子と距離を置き、彼が色んな人たちと触れ合える事を
さりげなく見ていてあげようと思った。
別に拗ねているわけではなく、その方が彼にとってずっといい事だろう。
日付が変わった時計を、うとうとしながら見て、なんかサエない誕生日を迎えたなと
枕もとのウイスキーでひとり乾杯した。
次回につづく・・・
しかし、うえだくんもシブい年齢になってきたなぁ。
38は太宰が亡くなった歳だよ、ゲバラは39、ジョンレノンは40。
そろそろ逆算して人生を考える歳だよね、ほんで結構その方が気合が入るんだよな。
息子ができたばかりのうえだくんは、少なくともあと20年くらいは生きてなくちゃね。
自分のお店と家族、考えてみたらお互い同じ立場なんや。
まぁ先輩の僕の方がずいぶん気楽な立場で、うえだくんはこれからも大変やろうけど。
息子が働いてくれて、さらに気楽になったんで、残り7年くらいの40代は世界中を旅しようと思ってる。
かっこいいだろ?
近々また、奈良まで飲みにいくからまた色んな話を聞いてもらおう。
ブログじゃ書けない事とかね(笑)

そうそう、僕もフィッシュマンズを聞くといつもあの頃の事やうえだくんのことを思い出してしまうよ。

なるべく好きなことやっていこうぜ、ちょっとくらいなら嫁にゲンナリされても大丈夫だよ。たぶん(笑)

ちょっと落ち着いて考えていらっしゃる辺りも
余裕を感じます(^^)
人間、やはり余裕がないと!
余裕なくても余裕あるふりするのが得意な私が言うのもなんですが(〜▽〜;)
Shimonさんは、いつも余裕たっぷりに見えますがね。
たしかに旅もこのあたりになると、いろんな事に慣れてきて気持ちがゆったりしてきたような気がします。

ケンカと一緒で
半分ははったりでイケルと思っております(〜▽〜)
いいですね(笑) 同感です。
